さやぽ降臨@山本サヤカオフィ

ある愛の詩No.28 DATE:2005/06/08(Wed) 03:07
name:山本サヤカ


とても美しく、綺麗な物語。溢れる涙は悲しくも辛くもなく、優しいものだった。この本を書いた小説家さんは、「忘れ雪」を書いた方で、この方が描くストーリーは必ず何か感じさせてくれる。そして、自分が想像していなかった意外な展開へと物語が進んでいく。「ある愛の詩」では、まず表紙に心を奪われた。キラキラ光り輝くイルカ。海と一体になり、光の指す方へと泳いでいるよう。そんな風に感じさせる表紙。物語も、海や空、砂浜、イルカ…自然に包まれている景色が浮かぶ。透き通った海、美しく揺れる海藻、雲一つない広い青空、さらさらの白い砂、数えきれない満天の星。澄みきった空気。この話に出てくるマリンスターという珊瑚のかけら。まだ見たことのない自然の世界を見てみたいと思った。 そして、主人公である男の人が好きな女の人の為に、自分の島を離れ、慣れない都会に出てきて、女の人を見守ろうとする姿、とても素直で純粋な心、素敵だと思ったし、自分がこの中の男の人だとしたら、好きな人のためにここまで尽くせないかも知れない。この男の人は、たくさんの愛を持っているが、愛し方と愛され方を知らない。そばで見守ることだけが愛だと思っている。
反対に素直になれない女の人。好きで、ずっと一緒にいたい想いがあるのに、口にしてしまうのは嫌味なことだったりで、うまく表現出来ない。でもこの二人に共通して持っているもの…それは心の傷。読んでいて、この女の人が素直にうまく言えない台詞を言ったときは、こっちまで悔しかったり切なかったりする。女の子が恋をしたとき素直になれなかったり、自分の思っていることと反対のことを口にしてしまったりするもどかしい気持ちがすごく伝わってきた。美しく、優しく、気持ちの良い風が吹く世界を感じさせてくれる一冊です。